中学受験で後悔する母親が、受験前に見落としがちなこと|後悔しないための考え方

中学受験が終わったあと、
「もっと違う受験をさせればよかった」
そう感じる母親は少なくありません。
しかし、その後悔の多くは
受験が終わってから生まれたものではなく、
受験前の前提のズレ
から生まれていることも多いのです。
この記事では
・中学受験で後悔が生まれる理由
・多くの家庭が見落としがちな前提
・受験前に考えておきたい家庭の軸
を、心理学の研究と私自身の経験をもとに整理します。
これから中学受験を迎える家庭が
後悔しない受験をするためのヒントになれば幸いです。
目次
1 中学受験で後悔する家庭は少なくない
2 なぜ受験後に後悔が生まれるのか
3 多くの家庭が見落とす中学受験の前提
4 私自身も受験の中で揺れていました
5 価値観は失いかけたときに気づくことがある
6 受験前に考えておきたい家庭の軸
7 中学受験は心理戦でもある
8 中学受験は家族のアトラクション
1 中学受験で後悔する家庭は少なくない
中学受験が終わったあと、
「この受験でよかったのだろうか」と振り返る家庭は少なくありません。
もっと違う塾を選べばよかった。
もっと違う学校を受ければよかった。
もっと違う関わり方があったのではないか。
こうした思いが、受験後に頭をよぎることがあります。
2 なぜ受験後に後悔が生まれるのか
受験後の後悔の背景には、心理学でいう
後知恵バイアスがあります。
人は結果を知ったあと、
「最初からこうなると分かっていた」
と感じやすくなります。
そのため、
「あの学校ではなかったのでは」
「もっと違う選択があったのでは」
と感じてしまうのです。
3 多くの家庭が見落とす中学受験の前提
ここで、とても重要な視点があります。
後悔は受験後に起きますが、
その原因は受験前にすでに始まっています。
そして多くの家庭は、
何をゴールにして中学受験をしているのか
をはっきりさせないまま
受験に入っていきます。
さらに言えば、
自分たちの価値観に気づかないまま
走り始めていることも少なくありません。
中学受験は、
気づかないまま進むほど
後悔が大きくなる構造を持っています。
最近はSNSで
中学受験の情報を集める家庭も増えています。
しかしSNSに投稿しているのは、
トップ層の優秀な子どもの家庭であることが多い印象があります。
「塾の課題を自走しています」
という投稿を見ることもあります。
しかし実際には、
中学受験をする子どもたちは
もともと学校で成績が良い子どもたちです。
その中でさらにランキングがつくのが
中学受験の世界です。
受験塾の教材は
入試問題から逆算して作られた
かなり難しい内容
になっています。
そのため、
学校の宿題を自分でできる
学習習慣がついていないと、
中学受験塾のカリキュラムについていくことは
簡単ではありません。
子どもに
「やっておきなさい」
と丸投げするのは、
中学受験塾の前提を理解していない
関わり方とも言えます。
そして忘れてはいけないのが、
中学受験の偏差値40は底辺ではありません。
それは
できる子どもたちの中でのランキング
なのです。
4 私自身も受験の中で揺れていました
私自身、教育の現場に長く関わってきました。
そのため
「子どもにはこんな大人に育ってほしい」
という教育観そのものは
持っていました。
しかし、息子が塾に入り
小学校4年生から受験準備が本格化すると、
別の意味で揺れ始めました。
それは教育観ではなく、
受験にどういうスタンスで向き合うか
という点でした。
塾の課題は膨大に感じられ、
それをこなすだけで毎日が精一杯。
私はフルタイムで働いており
夫とは生活時間が違っていたため、
ワンオペで塾のフォローをする日々になりました。
子どもとのバトルも増え、
「今日は平和に終わるだろうか」
と考える日もありました。
さらに、SAPIX生に配布される
月刊誌「さぴあ」に登場するご家庭を見るたび、
「うちはこんなに立派じゃない」
と勝手に落ち込むこともありました。
5 価値観は失いかけたときに気づくことがある
学校選びについては
夫とよく話し合っていました。
子どもがいない時間に散歩をしながら、
教育方針や学校について
何度も話し合っていたのです。
それでも、
本当に自分たちが大切にしているもの
に気づいたのは、
夫婦にとっての本命校の
合格発表の日でした。
掲示板に息子の番号が
なかった瞬間です。
そのとき初めて、
「私たちの譲れないラインはここだった」
と気づきました。
人は、自分が大切にしている価値観を
分かっているつもりでも、
実ははっきり自覚していないことも多いのです。
6 受験前に考えておきたい家庭の軸
中学受験で後悔しないために大切なのは、
家庭の教育方針を言語化すること
です。
そもそも、
何をゴールにして中学受験をするのか
を明確にする必要があります。
たとえば
・どんな大人に育ってほしいのか
・そのためにどのような経験をさせたいのか
・どのような教育環境が合っているのか
・家庭として何を大切にするのか
こうしたことを受験前に考えておくことで、
受験の方向性は大きく変わります。
中学受験はゴールではありません。
子どもを精神的にも経済的にも自立した、
自分の言動に責任を持てる大人に育てるための通過点
に過ぎません。
だからこそ、
中学受験を通して
中学入学前にどのような力を身につけさせたいのか
という「中間目標」を持つことが重要になります。
この視点があると、
過剰な期待や気負いが減り、
受験生活を落ち着いて進めることができるようになります。
たとえばSNSでは、
「塾の勉強を自走している」
という投稿を見かけることがあります。
しかし実際には、
それができる小学生は
ごく一部に限られます。
多くの子どもにとっては、
それができないのが普通です。
だからこそ中学受験は、
周囲の大人の伴走が前提となる受験
なのです。
わが家では、
「子どもが自走すること」ではなく、
中学入学までに
勉強の仕方が分かり、
学習習慣が身についていればよい
と考えていました。
そのためには、
・学校の宿題は自分でできる
・提出物は必ず出す
ということが、
当たり前にできている状態が
前提になります。
これは、長男の受験を通して気づいたことではなく、
私自身が教育現場で長く見てきた中での
実感でもありました。
私は私立中高で教壇に立っていますが、
成績が伸び悩む生徒の多くに共通しているのは、
・宿題をやる習慣がない
・提出物を出す習慣がない
という、基本的な学習習慣の欠如です。
そのためわが家では、
小学校入学の段階から
「課題は必ずやる・必ず出す」
という習慣を徹底してきました。
中学受験は任意の挑戦です。
だからこそ、
小学校での当たり前を当たり前にできること
が、
受験成功とその後を支える
土台になると考えています。
そして、
長男の受験でこの気づきを得て、
私たち夫婦は
6歳下の次男の受験では
次善校の選定基準を見直しました。
そのきっかけになったのは、
長男の受験で、
私たち夫婦にとっての本命校の合格発表で
一度、不合格をもらった瞬間でした。
そのとき初めて、
「自分たちは本当はどのような学校を望んでいたのか」
「何を一番大切にしていたのか」
がはっきりと見えたのです。
それまでも話し合って決めていたつもりでしたが、
本当に大事にしている価値観は、
失いかけたときに初めて明確になる
のだと実感しました。
結果としては、
その後繰り上げ合格をいただき、
進学することができました。
いわば
軽いやけどで済んだ
とも言えるかもしれません。
しかし、
あのときの経験は、
親子にとって
神様からのお灸のような出来事
でした。
そしてその経験があったからこそ、
次男の受験では
ただ偏差値や合格可能性で選ぶのではなく、
家庭として本当に大切にしたい価値観に合う学校かどうか
を軸に、
受験戦略を見直すことができました。
さらに大きかったのは、
夫婦のスタンスが揃ったこと
でした。
受験に対する考え方が一致したことで、
精神的な負担は大きく減り、
同じ中学受験でも
長男のときとは全く違う感覚で向き合うことができました。
中学受験が終わったあと、
「立ち直れない」と感じる母親も少なくありません。
その心理については、こちらの記事で詳しく整理しています。
ここまで読んで、
「中学受験で後悔しないためには、
何を軸に考えればいいのか」
が少し見えてきた方もいるかもしれません。
では実際に、
どのような考え方で受験に向き合えば、
“やってよかった”と思える受験になるのか。
その本質については、
こちらの記事で詳しく整理しています。
▶ 中学受験の成功とは何か(合格だけではない“後悔しない受験”の考え方)
7 中学受験は心理戦でもある
入試本番の期間には、
ほんの1日の中でも
大きな感情のアップダウンがあります。
これは、想像以上です。
私は大学受験で浪人も経験しています。
それでも、
自分の子どもの中学受験に使ったエネルギーは
それとは比べものにならないほど大きいものでした。
私は職場でも
「情緒が安定している」
と言われることが多く、
自分でもそう感じています。
しかし、そんな私でも
短時間の中で
耐えられないほどの感情の揺れを経験しました。
期待
不安
安堵
絶望
それらが、
短時間で何度も押し寄せてきます。
中学受験は、
単なる学力の勝負ではありません。
感情が大きく揺さぶられる心理戦
でもあるのです。
8 中学受験は家族のアトラクション
私はよく、中学受験を
「家族で楽しむ人生最大のアトラクション」
と表現しています。
その中には、
ジェットコースターのような
不安になる瞬間
嬉しい瞬間
苦しい瞬間
が含まれています。
日々の生活の中では経験しないような
感情の振れ幅を、
家族で共有する時間でもあります。
だからこそ、
大変ではありますが、
その経験は
家族にとって忘れられない時間
になります。
中学受験は、
子どもだけの受験ではなく、
家族全体が向き合い、成長していく経験
なのです。
ここまで読んで、
「頭では分かっているけど、
それでも不安が消えない」
と感じた方もいるかもしれません。
それは、
あなたの考え方が間違っているからではなく、
受験に対する前提と感情が、まだ整理されていないだけ
かもしれません。
中学受験は、
終わったあとに
「やりきった」と思えるか
「失敗だった」と感じるか
で、その後の親子関係や子どもの自己認識にも影響します。
そして実際に、
受験後に気持ちを引きずり、
立ち直れなくなってしまう母親も少なくありません。
その心理と構造については、
こちらの記事で詳しく整理しています。
【関連記事】
中学受験の母親心理については
こちらの記事でも詳しく整理しています。
▶ 中学受験で後悔する母親の共通点
▶ 中学受験がつらい母親へ
▶ 中学受験で「失敗だった」と自分を責める母親へ
▶ 中学受験で親子関係が悪化する家庭の共通点
▶ 中学受験の成功とは何か
FAQ
-
中学受験で後悔しないために一番大切なことは何ですか?
-
受験前に「何をゴールにするのか」を明確にすることです。偏差値や合格だけでなく、どんな大人に育ってほしいのか、そのためにどんな経験をさせたいのかという軸を持つことで、受験の判断に一貫性が生まれ、後悔を減らすことにつながります。
-
中学受験は子どもに任せた方がいいですか?
-
完全に任せるのは難しいケースが多いです。中学受験塾のカリキュラムは難易度が高く、小学生が一人で管理するのは現実的ではありません。家庭のサポートと伴走が前提となる受験です。
-
中学受験前に身につけておくべき力は何ですか?
-
学習習慣と提出物をきちんと出す力です。毎日の学習を継続する力や、課題をやりきる力は、中学入学後の学習にも直結します。受験対策以前に、この土台を整えることが非常に重要です。
ここまで読んで、
「頭では分かっているけど、
それでも気持ちがついてこない」
と感じた方もいるかもしれません。
それは、あなたの考え方が間違っているからではなく、
情報と感情が混ざったまま
動こうとしているだけかもしれません。
すぐに答えを出す場ではありませんが、
いまの状態を
一度言葉にして整理したい方には
受け取っていただけるものがあります。

成合弘恵(なりあいひろえ)
ヒロ・スマイルコーチング代表/中学受験ライフコーチ
教育現場29年・元大手塾講師/高校教員
NLP上級プロコーチ
NLPマスタープラクティショナー
教育カウンセラー
明治大学文学部卒業
茨城県出身/千葉在住
元大手進学塾講師、公立高校教諭、私立中高講師として教育現場に29年以上携わる。
大手進学塾では中学受験・高校受験指導を担当し、開成高校・筑波大学附属高校など難関校への合格者を多数指導。
教育現場では教育相談や特別支援教育コーディネーターを担当し、公立高校在職中からカウンセラー資格とコーチ資格を活かして、のべ2800回以上の生徒カウンセリング面談を実施。
これまで教育現場で対応してきた保護者はのべ2200名以上。
最難関校を目指す生徒から教育困難校の生徒まで、幅広い生徒の指導経験を持つ。
私生活では二人の息子の母。
長男は東京大学卒、次男は慶應義塾大学在学中。
自身も中学受験を経験した母親として、受験期の家庭のリアルを知る。
現在は中学受験期の母親をサポートする「中学受験ライフコーチ」として活動。
ママが笑顔になることで子どもが笑顔になり、子どもたちが笑顔で生きられる社会をつくることがミッション。
中学受験期の母親の心理や親子関係について、教育現場での経験と自身の子育て経験の両方から発信しています。

